真実の愛のカケラ
そして、柚希の家族に見送られ東京へと出発した。


「あぁ、疲れたぁ。
お母さんにスーツのこと突っ込まれてたけど、私も気になったんだよね。
拓哉、そんなスーツ持ってたっけ?」


ギクリ。


「あ、あぁ。
最近新しく買ったんだよ」


「ふーん、そうだったんだ」


特に疑う様子のない柚希にひとまず心を撫で下ろす。


本当のことなんて言えない。


見合いの席に閉じ込められ困り果てた結果、言われた通りに動くふりをして用意されていたこのスーツに着替えた後、トイレに行くと見せかけてその隙に従業員専用出入口から脱出。
そして、黒服の男たちに見つからないようにビクビクしながら逃げてきた、なんて…。
格好悪すぎて絶対に言えない!
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