真実の愛のカケラ
窓越しに見えるその人を今夜も観察していると、こっちに気が付いた。


おーい、と手を振ってみると、周りのスタッフに気づかれないように軽く手を上げて返してくれる。


「んふふ、かわいいな」


そんな姿に顔がニヤつく。


あ…、女の子が話しかけてる。
あの子もバイトだったっけ?
シフトの話でもしてるのかな?


しばらくすると店の電気が消えて、さっきの女の子が出てきた。
くるんと揺れる髪にピンクの薄いコートを羽織った、なんとも女子力の高い格好。


その子は店の前で立ち止まって何かを見ている。
そんな、何かを見ているその子を私が見ていると、ふとこちらを見上げた。


ん!?
じっとこっちを見てる?


まさか、こんな格好で飲んでること本社に言い付けるなんてしないよね!?


いや、しないでしょ!
私が本社に勤める人間だってことをしらないんだから。


何も気付いてないふりをしよう。
そう決めてぎこちなく梅酒を飲む。
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