真実の愛のカケラ
「熱狂的なファンが多いんだな。
その会社大丈夫か?」


たぶん、私の浅はかな嘘なんてバレているんだろう。


「大丈夫だし!

もー、いいから!
早くベランダに行って!」


これ以上話を掘り下げられたくなくて、拓哉をベランダに連れ出す。


「じゃあ、気をとりなおして…
かんぱーい」


梅酒とオレンジジュースで乾杯をする。
拓哉はこのあと車だから仕方がない。


「明日もバイト?」


「うん」


「ふーん。そっか…」


私たちはお互いにバイトのこと、仕事のことを話さないし聞かない。


彼女が自分のバイト先の本社に勤務しているというのは、男の人的にはどうなんだろう、と余計なことを考えてしまって、言い出せない私にとっては都合がよかった。
< 26 / 240 >

この作品をシェア

pagetop