真実の愛のカケラ
「柚希」


たくさんのファイルが立て掛けられた棚の陰に、拓哉に肩を抱かれたまま身を隠す。


ほぼ抱き合っている形で、拓哉のネクタイに頬が触れるほど近い。


驚いて離れそうになる私は、グッと引き寄せられる。
少しでも拓哉から体を離したら見つかってしまいそう。


「誰だよ、ここ最後に使ったの。
電気つけっぱなしじゃないか」


その人の声がすぐそこで聞こえる。


早く出ていって!
もしも見つかったらと考えただけでゾッとする。


「あったあった」


机に置いてあったパソコンを持って、扉に向かっていく。
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