真実の愛のカケラ
「あぁ。
柚希が急に俺のこと拓哉って呼んだら、役員共の度肝を抜くだろうな」


想像でもしたのだろうか。
ククッと堪えきれずに笑う声が聞こえる。


「笑い事じゃないよ。
今のうちから能見さんとか副社長って呼ぶ練習しとこっかな」


「人前ではこの関係秘密にしておかなきゃいけないんだから、2人きりの時くらい名前でいいだろ。

柚希?」


顔をあげると、目が暗闇になれてきて拓哉の優しい表情が見えた。


そっか。
名前で呼ばれて嬉しいのは、私だけじゃなかったんだ。


「そうだね、拓哉」


柚希と呼ばれても、拓哉と呼んでも私の中にはじんわりと幸せが広がる。


自然に笑みがこぼれると、頬に手をそえられた。
見つめ合うと、暗闇に光るその瞳に吸い込まれそうになる。
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