真実の愛のカケラ
「こうやってると会社にいること忘れそうだ」


「私も」


スーツの袖を掴むとその距離は徐々に縮まりゆく。
口付けを交わすまであと数センチ。


その僅かな距離に、部屋でのキスとは違うドキドキ感がある。


その時、廊下がざわついた。
どうやら何人かが一緒に帰っているらしい。


その音に、慌てて拓哉から離れる。


「ここにいると、また誰かが入ってくるかもしんねーな。
俺達もそろそろ出よう。

廊下に出たらすぐに別々の方向に歩くぞ」


もう窓の外からのうっすらとした灯りで、充分に部屋を見ることができるまでに目はなれていて、私たちは
扉の前まで移動する。
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