真実の愛のカケラ
「利益をあげられないと店はやっていけない。
理想を語るばかりでなく、現実を見ろ」


「お客さんに喜んでもらえないと、それこそレストランはやっていけません!」


「あのな…」


「高級食材は使わずに料理を提供するからコストは抑えられます。
口コミで広がるようにして宣伝費も抑えます。
常にお客さんの声に耳を傾けるから柔軟な対応ができるんです。
それは、サービスの質の向上に繋がるんです。
メニューにもこだわって、何品も頼んでもらえるようにして売り上げも伸ばします。

…この案が駄目なら、私じゃない人がやった方が良いと思います」


目を潤ませて最後に力なくそう言うと、俯きながら会議室を出ていってしまった。


…違った。
我を通していると思ったけど、任された仕事を全うするための強がりだった。


でもやはり、新店舗について妥協はできない。
俺が関わった店がすぐに潰れるなんてことになったら、周りから何て言われるかわからない。
俺にだって責任とかプレッシャーがあるんだ。


「はぁ…」


いくら仕事と私生活を区別しているとはいえ、仕事が終わっていつものように柚希に接することなんてできない。
すぐに会っても、また言い争いになるだけだ。
ならもう少し時間をおいたほうがいい。
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