真実の愛のカケラ
山口さんが置いていった店内のイメージ図を広げてみる。
柚希がテーブル席を増やすなら2つまでと言って、店の奥の方に席が増やされていて、奥の方は通路が狭まっているが手前の方は余裕がある。


やっぱりそういうことか。
これならベビーカーで来店した人は移動の少ない店の手前に案内すれば良い。


ランチを楽しみに来た女性2人組なら、奥に案内する。


なんだよこれ、よく考えられてるじゃねーか。


その時、なんというタイミングの良さか、堺さんからの着信。


「宮野さんの思惑に気付くことはできましたか?」


「はい。
ちょうど今、わかりました。
開店して対応してたんじゃ遅い、お客さんの要望は既にあったんですね。
それに…柚希は気付いてた」


「拓哉さんにも、宮野さんが見たものが見えたようですね」


そうか…。


相変わらず、俺の目の前は多くの人が通り過ぎて行く。
そのひとりひとりに、こうして欲しいという要望があるはず。
それを全部は叶えられないけど、より多くのことを叶えてあげたい。
柚希はそんな風に考えたのだろうか?


そんな要望が、思いやりとなって表れるのがこの店舗だ。
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