きみと駆けるアイディールワールド―青剣の章、セーブポイントから―
 アタシたちは階段を駆け上がった。二階の大部屋は、ふすまがピッチリ閉ざされている。パラメータボックスに警告が表示された。
「敵が多いみたいですね」
「だな。ミユメ、索敵魔法、使えるか?」
「もちろんです」
「調べてくれ」
 素早くコマンドを入力する。
「索敵―エネミースパイ―!」
 ふすまが透けて見えた。敵は二十人。全員、もう刀を抜いている。こちらがふすまを開けた瞬間に、きっと彼らは斬りかかってくる。
「ザコが十五と、力場使いが五人。力場使いは、部屋の奥で構えています」
 近藤さんがふすまに手を掛けた。アタシたちを振り返る。
「覚悟はいいな?」
「はい!」
「OK」
「いつでもどうぞ」
「にゃあ」
 全員の返事を聞いて、近藤さんは、ふすまを勢いよく開けた。
 白刃。
 近藤さんが敵の刀をかいくぐる。剛剣がうなった。乱戦が始まる。
「くそ、狭ぇよ!」
 ラフ先生が悪態をつく。沖田さんが敵と切り結びながら叫んだ。
「ボクたちの相手は、奥の連中だよ! 近藤さんを力場に巻き込んじゃいけない!」
「氷嵐―アイスストーム―!」
 氷のつぶてをばらまきながら、アタシは志士たちの間を突っ切る。
 アタシの後にラフ先生が続く。
「頼もしいな、ミユメ! この調子で、アイツらも倒そうか!」
「はい!」
 沖田さんも追いついてきた。
 近藤さんは部屋の外だ。普通の志士全員を相手取っている。数が多い。大丈夫なんだろうか。
「こっちはオレ一人で十分だ!」
 たくましい大声が聞こえた。沖田さんがクスッと笑った。
「張り切っちゃって。それでこそ近藤さんだ」
 力場使いの五人が一斉に吠えた。その額に円環の紋様が赤黒く光る。旅館の大部屋が消えて、独特のバトルフィールドが立ち上がる。どこまでも広い、いびつな空間。
 ラフ先生がナイフを双剣に持ち替えた。
「よっしゃ、本領発揮!」
 アタシは唄を発動する。
「戦唄―バトルソング―!」
 物理攻撃力を中心に、味方全員のステータスが上昇する。
 妖志士たちの様子が変化を始めた。赤黒い紋様の発光が、彼らの全身を包む。
「えっ、何ですか、あれ?」
 ぐにゃりと、彼らの体の輪郭が歪んだ。手足が胴体に呑み込まれて、凹凸がなくなる。五人だった妖志士が、くっついて、つながった。
「大蛇かよ」
 不気味に赤黒い光をまとって、彼らは、一体の巨大なヘビになった。ウロコは、いろんな色が交じり合うまだら模様。
「感心するほど悪趣味だね」
 ヘビがアタシたちを見回した。とぐろを巻きながら、ぬらぬらと動く。裂けた口、細く長い牙、二股に分かれた舌。
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