お姫様になりたくて

「…姫様、おそれながら…」


泣いている着物の人の後ろに座っていた女性が口をひらいた。


って、言っても、ここにいる人は全員、
着物で女性ばっかりだ…

ーー私も着物だーー!!


「はっ、はい。どうぞ…」


「…おそれながら、申し上げます。姫様の目の前におりますのは、乳母の刑部卿局
(ぎょうぶきょうのつぼね)様でございます…
わたくしは、お千代でございます。」


「…乳母…??」


乳母の刑部卿局が、急に顔を起こして話だした。


「千姫様が、この世にご誕生されてから今日まで、一日たりとも、姫様から離れたことがございません!ご一緒に…江戸からこの大坂まで参ったではございませんか……」


また、泣き出してしまった…
どうしよう…


えっ、、、!
江戸って言った!??
ここは大坂ーーー!??


とりあえず、落ち着こう…


「あの…すみません…、朝から疲れてて、記憶がなんかあやふやで…」


それだけやっと伝えると、
私の話を聞いた刑部卿局が、ピタッと泣きやんだ。


「姫様、申し訳ございません。姫様のご体調の変化に気がつかぬとは…誠に申し訳ございません!」


「いえっ、あの、そんなこと…」


刑部卿局が後ろを振り返り問う。


「お千代もお側にいて、気がつかなかったのか?」


「はいっ、申し訳ございません!…」


やばい。
大事になってる…?
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