プロポーズは朝陽を浴びて
 時計を見ると午前0時を回っている。ひとが訪ねてくる時間ではない。

 もしかしたら……。

 ドアを開けて現れたのは、1週間ぶりの大好きなひとの姿。

「烈くん……」

「………」

 玄関に迎え入れ、烈がドアの鍵を閉める。改めて向き合い、すみれを見下ろす彼の瞳が熱っぽく潤んでいた。顔にかかる息が、いままでお酒を飲んでいたらしいことを知らせる。

 だんまりしてひたすら見つめてくる烈。
 いつもはお酒を飲んでも、変化のないひとだけど……なんだか様子が変だ。
 これは、明らかに酔っている。
 烈は、酔うとどうなるんだろう?
 泣き上戸? 笑い上戸? それとも、怒り上戸?
 どれも、やっかいな気はする。

 ふたりで玄関に突っ立ったまま数分が過ぎ、ラチがあかないので、すみれはそれとなく様子をうかがうことにした。

「元気そうだね」

 苦笑いを浮かべつつ、酔っている以外変わりのない烈が、手を伸ばせば触れられる至近距離にいることが素直に嬉しかった。

「なんで連絡してこなかった?」

 すみれの言葉に重なるように烈からの問いかけは、ちょっぴり強めの口調。
 これは怒り上戸?
 普段の柔らかな口調からのギャップにドキッとした。
 思い返せば、烈の怒った姿なんてほとんど見たことない。

「それは……あんなこといっちゃった後で、迷惑かなって思ったから」

「会いたくなかったのかよ? 声が聞きたいとかなかったのかよ?」

 低く唸るような声で、烈はたたみかけてくる。
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