君が風邪を引いたら
「えっ?」

 ほ、本気?
 返答に困っていると、天井を見上げながら顎をかく蒼介が、恥ずかしそうに躊躇いながらも、ベッドに入ってきた。

「ちょっと詰めて」

 壁際に寄ると、後ろから彼が体をくっつけてきた。自分とは違う、硬い体に、守るように優しく抱きしめられる。

「ねぇ、人肌、どう?」

 耳元で彼の声。
 ど、どうっていわれても。
 どう答えたらいいのか、困ってしまった。

「こうしてると、君の体が熱いのがわかる」

「そ、そう?」

 好きな人の体を後ろに感じて、違う意味でドキドキしてきた。

「あーなんか、こうしてくっついてるともっと親密になれることしたくなっちゃうなぁ」

「えっ……」

 まさか、誘いをかけてる?

「キス、したい」

 ものすごく近くで、そんな呟きずるい。

「だ、だめだよ。風邪移っちゃう」

 やっとのことで首を振る。
 いつものわたしなら喜んで応えるのに、と思いながら。

「君の風邪なら、いいよ。風邪貰ったら、次は俺が看病してもらえるし」

「甘えようとしてない?」

「甘えたい年頃なの」

 二十歳なのに?
 可愛いワガママに、思わず笑みが浮かぶ。

「あ、やばい。君のぬくもりとか、匂い感じたら理性より本能が……」
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