君が風邪を引いたら
 いっそう身を寄せてきた彼が、己の感情の高まりを示すようにギュッと抱きしめてきた。それに呼応するように、わたしの下腹部がキュンとする。
 蒼介がわたしの後頭部の髪の毛を優しくなでる。隠れていたうなじが現れ、しばらくすると、そこに柔らかいものが触れてビックリした。

「ちょ、ちょっと?」

「うなじにキス、しちゃった」

 チュッ。
 今度は音をたてて、もう一度うなじにキス。

「これくらい、いいでしょ」

 そういって、濡れた舌でうなじを舐める。
 舌が通った場所を、冷たい空気が触れて体が震える。寒気? 快感? どっちなのか、もうわからない。
 とにかく全神経がうなじに集中して、体が溶けていくような感覚に陥る。
 彼の体も目覚めたらしく、わたしのお尻のあたりに、さっきまではなかった、突っつくようなものが当たる。
 うなじへのキスは濃厚さを増してきて、やめる気配がない。

「あの、もしかして、したい、とか……考えてる?」

「……」

 肌の肌の上を迷っていた唇が離れた。蒼介の息がうなじをくすぐる。

「……弱ってる君を相手に出来ないよ」

 でも、いま間があったよね?
 答えに迷った?
 やがて、後ろから抱きしめていた手が離れ、蒼介が上半身を起こし、深くため息をついた。

「俺、やっぱもう帰る。このままだと襲いかねない」

 理性を押し止めようとしているのか、少し辛そうな表情だ。

「看病するとかいったのに、本当ごめん」
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