指先からはじまるSweet Magic
気まぐれな猫の欲情スイッチ
出勤して直ぐ頼まれた、単調なデータ入力。
朝礼が終わってから、ずっとパソコンに向かい合って、指を動かし続けた。


キリのいいところで手を止めて、私は凝り固まった肩を解すように回した。
チラッと時計を見ると、長針と短針が12を差して重なっている。
周りのデスクの同僚達は、既に休憩に入ってしまった後だ。


パソコンの左側に置いた書類に目を遣ってから、あとどれくらいかかるかをザッと概算した。


お昼を少し遅らせてこのまま続けるか。
それとも一度一休止するか。
ちょっと悩ましいところだ。


う~ん、と唇をキュッと閉じて、軽く唸りながら考えた時。


「青木さん」


私が担当する営業マンの長谷さんが、私を呼びながら近寄って来た。


「あ、すみません。入力、後小一時間もあれば終わります。午後イチくらいには……もしかして急ぎますか?」


ふうっと息をついて振り返ると、いやいや、と苦笑された。


「それは、最初に頼んだ通り今日中でいいから。いや、青木さんは仕事が早いね。助かるよ」


早くなんかない。
いつものペースで普通にやっていれば、今日中どころかお昼前には終わっていておかしくないデータ量。


それを午前中で終えることが出来ず午後に持ち越しなのは、朝からずっと仕事に集中出来ずにいたからだ。
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