指先からはじまるSweet Magic
「里奈、落ちるよ」

「そしたら、圭斗が受け止めて」

「いや、無理でしょ。俺、ひ弱だし」


圭斗はそう言いながら、ぴったりと上半身を覆っているTシャツから伸びた二の腕を軽く撫で上げた。
そんなこと言ってるけど、遠目で見てもその腕が程良く筋肉質で引き締まっているのは良くわかる。


「冷たいなあ。でも、圭斗の腕、怪我させたら大変だもんね」


私もクスクス笑いながら軽く体勢を整えた。
それでも目線は地上の圭斗に向けたまま。


「……あの。圭斗も仕事帰りだし、もう遅いし、日を改めた方がよければ……」


そう言いながらも、本当は一刻も早く話をしなきゃ、って思っていた。


今日の夕方、四国出張から戻って直帰した私に、お母さんが心配そうに首を傾げながら教えてくれた、最新の圭斗情報。


それは、こんなに近くにいる私ですら、ちゃんと圭斗から聞いていない話で。
圭斗のお母さんから話を聞いたお母さんと同じように、私まで心配で不安になった。


圭斗ののんびりした性格は絶対母親譲りだって思う。
ただのお隣さんの私とお母さんがこんなに心配してるのに、どうして圭斗はこんなにケロッとしてるのか。


昔から結構こういうことは多々あって、その度に、私はこの状況に疑問を重ねて来た。
< 2 / 97 >

この作品をシェア

pagetop