指先からはじまるSweet Magic
そんな私が、どうして今、圭斗の勤務先の窓ガラスから、そおっと店内を覗き見る怪しい不審者になりさがっているのか。


それは、香織から仕入れた極秘情報を確かめる為だ。


圭斗の顧客の香織でも、まだ圭斗の独立は知らなかったらしい。
え~!!と盛大に声を上げながらも私の話を真剣に聞いた香織が、電話越しにう~んと唸った。


「それ、気になるなあ……経理知識とか詳しいアシスタント、って。私、一人しか思い浮かばないんだけど」


どんな人?と食い付いた私に、香織は意地悪く勿体ぶった後で、一言、ボソッと呟いた。


「超小顔でスタイルのいい、ショートカットの似合う美女」


なんとなく……そのアシスタントが女の子じゃないか、って予想はしていたけれど。
私から見ても『美人』に分類出来る香織がそこまで絶賛するルックスのアシスタントに、どうしようもなく好奇心が疼いた。


その上。


「まあ、独立しても一緒に働くくらいだから、当然だけど。……傍から見てても圭斗君と仲がいいのはわかるんだよね~」


そうまで言われてしまうと、好奇心は疼くどころか抉られる。


おかげで、この真夏の熱帯夜に、私は一人怪しさ満載でサロンの中を窺う羽目になったんだけど。
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