指先からはじまるSweet Magic
ガンガン押せば圭斗が『いいよ』って言ってくれるのはわかっていても、加減って物はちゃんとわきまえてる。
一応引く姿勢を見せた私の言葉を遮って、圭斗は予想通り、いいよと返事をしてくれた。


「俺もシャワー浴びたいから、二十分後にリビングに来て」

「ありがと! あ、うどん、早速食べる?」


私の質問に、圭斗は左手の手首に嵌めた、圭斗にしてはちょっとゴツいオメガのスピードマスターに視線を落とす。


「非常に魅力的なんだけど、この時間だしね。今度休みの日にでもゆっくり食べる」

「そっか。オッケー」


軽くVサインを送って見せる私に、圭斗はフッと目を細めた。
そして、微妙に視線を外しながら付け加えた言葉。


「……里奈、一応その上、何か羽織っておいでよ」

「ん?」

「いくら里奈でも、キャミ一枚じゃセクシーに見えるし」


ボソッとした一言を耳に止めてきょとんとした私に軽く手を振って、圭斗はお隣の家の門を開けて中に入って行く。


「セクシーって」


圭斗の口から飛び出て私に向けられた言葉とは一瞬信じられずに、私は柵から身体を離してから自分の格好を見下ろして確認した。
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