指先からはじまるSweet Magic
閃いた疑問に首を傾げた私に、彼は躊躇いながらも唇を開いた。


「あの……。塩入さんと、どういうご関係ですか?」

「えっ……!? あ、幼なじみ、ってだけですけど……」


探られてるのを感じて、一気に居心地悪さを感じる。
だから、ただそう答えた私に、彼は少しだけ頬の緊張を解いて、ああ、と呟いた。


「もしかして、『里奈』さん?」

「えっ?」


いきなり名前で呼ばれて、私は素で目を丸くした。
そんな私の反応に、彼の緊張はむしろ完全に解れてしまったみたいだ。


「いえ、すみません。塩入さんからよく聞いてます。『絶対に髪を切らせてくれない難攻不落の幼なじみがいる』って」


な、難攻不落、って。
なんだか自分がものすごい偉そうな気がして、私はただ身を縮めるしか出来ない。


そんな私を、彼はクスクス笑ってから、完全にドアを締めて外に出て来た。
そして、あっち、と少し離れた白い壁の建物を指で示した。


「あの建物の二階が、うちの研修施設になってます。まだこっちに荷物あるし、塩入さんもいるはずですよ」


彼の指に導かれるように、その三階建てのビルに目を遣った。
そして、ありがとう、と呟いてから、一度踏み出した足を止める。
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