指先からはじまるSweet Magic
どうやら、二階のワンフロアを研修施設として借り切っているらしい。
狭い階段を昇って目の前に開けたガラス貼りの大きなドア。
その横に小さく『ニューミストラル研修所』と表示されている。
そっと中を覗き込むと、中から人の気配が伝わってくる。
どうしたもんか、と思いながら、私は思い切ってドアを開けた。
途端に聞こえて来る笑い混じりの会話。
「うっわ! 下手くそ。首筋に湯、流れて来たし」
「えっ? 本当に? やだあ、すみません」
聞き慣れた圭斗の声と、謝ってるのに全然そんな風に聞こえないケロッとした声。
私は一歩中に足を踏み入れたまま、そこから先に進めなくなった。
「うわ~、Tシャツぐっしょり。気持ち悪」
「乾かし終わったら、着替えて下さいね~」
「ってか、それ、お客さんにも同じこと言うつもり?」
サロンと同じシャンプー台に寝そべっているのが圭斗。
私に背を向けて圭斗の髪を洗っているのは、うなじを綺麗に見せるショートカットの女の子。
間違いなく、香織が言っていた『ショートカットの美女』だとわかってしまう。
「頼むから、シャンプー位まともにこなしてくれって。じゃないと何の為に俺の店に連れて行くんだかわかんない」
そして、圭斗のその一言が、私の勘にとどめをさす。
「頑張ってま~す。……あ、でもね。これでもちゃんと塩入さんに教わったことは身についてるんですよ?」
狭い階段を昇って目の前に開けたガラス貼りの大きなドア。
その横に小さく『ニューミストラル研修所』と表示されている。
そっと中を覗き込むと、中から人の気配が伝わってくる。
どうしたもんか、と思いながら、私は思い切ってドアを開けた。
途端に聞こえて来る笑い混じりの会話。
「うっわ! 下手くそ。首筋に湯、流れて来たし」
「えっ? 本当に? やだあ、すみません」
聞き慣れた圭斗の声と、謝ってるのに全然そんな風に聞こえないケロッとした声。
私は一歩中に足を踏み入れたまま、そこから先に進めなくなった。
「うわ~、Tシャツぐっしょり。気持ち悪」
「乾かし終わったら、着替えて下さいね~」
「ってか、それ、お客さんにも同じこと言うつもり?」
サロンと同じシャンプー台に寝そべっているのが圭斗。
私に背を向けて圭斗の髪を洗っているのは、うなじを綺麗に見せるショートカットの女の子。
間違いなく、香織が言っていた『ショートカットの美女』だとわかってしまう。
「頼むから、シャンプー位まともにこなしてくれって。じゃないと何の為に俺の店に連れて行くんだかわかんない」
そして、圭斗のその一言が、私の勘にとどめをさす。
「頑張ってま~す。……あ、でもね。これでもちゃんと塩入さんに教わったことは身についてるんですよ?」