指先からはじまるSweet Magic
デニムのショートパンツに、ふんわりフリル使いのキャミソール。
肩も背中も大きく開いていて、真夏のこの時期、夜の節電対策にはぴったりの格好。


シャワー浴びた後の寛ぎタイム。
休息時間は、普段なかなか出来ない女の子らしい可愛い格好もしたい。
胸元の大きなリボンと裾の二段フリルは、私的には『大人可愛い』と思って気に入ってるんだけど。


「……圭斗に言わせたら、セクシーになっちゃうのか」


思わず吹き出して笑いそうになりながら、私も部屋の中に戻った。
窓をしっかり閉めてカーテンを引く。


暑いし、本当はこのままでも全然OKだと思うけど、一応圭斗の言い付けを守って薄いカーディガンを羽織った。
そして、時間を気にしながらベッドのそばからバッグをズズッと引き寄せる。
中から取り出したのは、帰りの新幹線で暇潰しに捲っていたファッション雑誌だ。
小さく折り目をつけた巻中の見開きページで、私は手を止める。


アンニュイでちょっと妖艶な視線を惜しみなく向けるモデル顔負けの男。
本当の彼はいつも無邪気で少年のようなキラキラした瞳を私に向ける。
人懐っこくて愛嬌があって、誰と会っても初見では絶対に好かれるタイプ。


だからこそ。


『圭斗君にとってはイイお話かもしれないけど……。どこぞの過程で騙されやしないかって、久美さんの話聞いてて不安になってきて……』


お母さんの心配は、まんま私の胸に転移した。


圭斗の夢に水を差すつもりはないけれど、本当に大丈夫?って釘を刺すのは、幼なじみとしての私の義務だと思った。
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