指先からはじまるSweet Magic
私の脳裏を掠めたのは……まさに圭斗が言った意味そのままの存在の先輩、長谷さんだった。
返事が出来ない私に勢い付いたように、圭斗がハッと息を吐いた。


「……俺は、恋愛って、情に流されてするもんじゃないと思う」


その言葉が、私の胸を大きく抉った。


「……どうしようもなく込み上げる衝動を抑えられない相手じゃなきゃ、恋愛する価値もないよ」


更に続く圭斗らしくない言葉が、言いようもなく心に響く。


圭斗にとって、衝動を抑えられない相手ってどんな人なの。
そんな情熱的な言葉を言う唇で、どうして私にキスしたりしたの……?


心の中を醜くグルグル回る負の感情が、理性のギリギリまで浸食する。
そのまま顔を上げられなくて、私は家に着くまでずっと俯いたままでいた。
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