指先からはじまるSweet Magic
反論しようと口を開いた途端。


「……あのまま俺が里奈を、押さえつけてたら、どうするつもりだった?」


そんな不穏な一言を呟きながら目を細めて、圭斗がグッと身を乗り出してきた。


「え?」


いきなり狭められる距離に、本気で焦った。
シートに深くもたれるしか逃げ道のない私に、圭斗は更に距離を詰めてくる。


「ちょっ……!」


圭斗の肩に手を置いて、その身体を遠ざけようとした。
一見華奢でひょろ長い。『力』なんか感じられない身体なのに、どんなに押してもビクともしない。
自分で『ひ弱』なんて言っておきながら、意外に引き締まった圭斗の腕を思い出して、私の焦りはただ増すばかり。


そして、それどころか。


「……きゃっ!!」


いきなりシートが倒れて、私は支えを失った。
そのまま重力に任せて後ろに倒れ込んでしまう。


何が起きたかわからなかった。
ギュッと閉じた目を恐る恐る開くと、ほんの一瞬前と視界に映る車内の角度が変わっていた。


ほとんどフラットな状態に倒れた助手席。
狭い車内で天井を見上げた私の視界は、ほとんど圭斗の姿で遮られている。
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