指先からはじまるSweet Magic
圭斗の指が、スッと優しく私の髪を梳く。
ほんのわずかに頬や額を掠める感触に、閉じた瞼がピクッと反応した。


「ん……」


ちょっと開いた唇から、思わずそんな声が漏れる。
圭斗は黙ったまま、私のうなじを手の平で撫で上げて、髪をゆっくりと持ち上げた。
そして、首筋を支えたまま、私の身体を少しずつ後ろに倒して行く。


圭斗の手が離れたかと思うと、ふんわりしたタオルの感触を首の裏側に感じた。
同時に、前髪の生え際にトロッとした冷たい液体が零れるのがわかる。
その直後、圭斗の大きな手が、私の頭を撫でるように動く。


「あ、そこ……、気持ちい……」


目を閉じていても、軽く私に覆い被さる圭斗の気配を感じる。
そして、私の髪に優しく触れる手が、期待を裏切ることなく的確に私に心地良さを与えてくれる。
節ばった長い指がどんな風に私に触れているか感じられる。


トロンとうっとりした気分になって、身体からは力が抜けて行く。
大きく息を吸って胸いっぱいに酸素を取り入れた後、今度は大きく大きく息を吐きながら、なんとも言えない一言を漏らした。


「ああ……」

「……里奈」

「んん……」

「だから、里奈って」


少し困ったような圭斗の声が私を呼ぶ。
同時に顔にかけられていたタオルがずらされて、閉じた瞼の裏で浴室の明るい照明を感じた。
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