指先からはじまるSweet Magic
家に戻った私は、香織に言われた通り小学校の卒業アルバムを開いた。


クローゼットの奥底にしまったきり、もう何年開いていなかっただろう。
埃を被ったアルバムをなんとか見つけ出して、ベッドに背を預けながら床にペタンと座った。
膝の上で開くと、懐かしさのあまりつい頬の筋肉が緩むのを感じた。


香織の言葉が気になって後半の文集のページを捲ろうとしながら、私は懐かしい写真に意識が向いて最初から一ページずつゆっくり捲って行く。


六年生の時の同窓会。最後にやったのはもう二年前だった。


かなり久しぶりに出席した私は、正直クラスメイトだった友達の名前すらちゃんと覚えてなくて、名前を呼び合わないまま思い出話に花を咲かせた。
それでも話題にあがっている情景は、ちゃんと脳裏に浮かび上がってきた。


圭斗と同じクラスになったのは四年生の時が最後だった。
同窓会には圭斗はいない。
それでも圭斗の話題が出た時はドキッとした。


『昔から手先器用だったもんね。展覧会で金賞取った木彫りとか、すごいって思ったもの。美容師は天職だよね』


圭斗がいないはずの同窓会の記憶から、圭斗のことを思い出している。


そうして、あの時は受け流しただけだった女の子の言葉が、私の頭の中でリアルに浮かび上がってきた。


『里奈、髪結んでもらってたこと、あったよね』


その言葉と同時に、目に止まった男の子の写真。


クラスの中でもリーダー格で割と女の子に人気があったけど、悪戯好きで意地悪で、私は苦手だった。


そして、そのまま自分の写真を見つける。
上手く笑えずに強張った顔。
それなのに、髪だけはとても綺麗に結い上げられていて……。


視覚と記憶の両方から、私はその時のことをとてもリアルに思い出していた。
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