指先からはじまるSweet Magic
鏡越しの圭斗が、黙って俯く。
わかりにくいけど、その頬が赤くなってるのはわかった。


「だから……あの時、圭斗がその……私にキスしたのも、魔が差したとかふざけてとか、そんなんじゃなかったって思う。……思いたい」


圭斗はゆっくり鋏を動かしながら、黙っている。
そんな圭斗を微笑ましく思うくらい……。


私は圭斗の想いを確信して、強く感じていた。


最初ハガキで見た時、どこぞのカフェにもそんな名前のお店があったな、なんて思った。
でも、圭斗の卒業文集を読んで、私は自惚れに近い確信を持っていた。


「『Ange』は天使。『Lina』は……私の名前だよね?」


自分で言うのも恥ずかしいけど、うんって答えて欲しくて問い詰める。


自分のお店の名前に、そんな深読み出来る言葉を選ぶなんて。
なんの意味もないとは思いたくない。


そして、私の願い通り。


「……うん」


圭斗が短くそう答えてくれる。
それだけで、どうしようもなく温かい熱が心に流れ込んで来た。


「……圭斗」

「自分の店持つって考えた時から、店名だけは決めてた」


開き直ったようにグッと顔を上げて、圭斗が鋏を動かし始める。
圭斗の左手の指が挟み込む一房の髪から、小さな細かい髪がパラパラと落ちて来る。
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