指先からはじまるSweet Magic
「他のどんな遊びよりも、里奈、それが好きだった。俺はいつも執事か召使でさ。里奈を綺麗に飾ってあげるのが俺の役割。俺は、王子様をやりたかったんだけどね」


微妙に責められてる気がして、ギクッと身体を震わせる。


確かにそうだったかもしれない。
圭斗と二人でやるお姫様ごっこで、私は圭斗に綺麗にしてもらうのが何よりも楽しくて……。


「髪を編んであげたり、花冠作って頭に載せてあげたり。そうすると里奈はいつも俺に満面の笑顔を向けてくれた」

「……うん」

「そういう遊びをしなくなっても……里奈は、俺が綺麗にしてあげると、すごく嬉しそうに笑ってくれて……」


私を抱き締める腕から力を抜きながら、圭斗がフッと笑った。


「最後まで王子様になれなかったけど、満足だって思えた」


そして、私の髪を摘まんで弄びながら続ける。


「里奈の笑顔は、いつも俺の宝物だったから」


私が思い出せたのはきっとほんの断片でしかなくて……。
思い出せないくらいたくさんの笑顔が、きっと圭斗の心の中に残っている。
そしてその全てを、圭斗は宝物だって言ってくれる。
それが今、どうしようもなく素直に嬉しい。
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