指先からはじまるSweet Magic
親繋がりで私は割と圭斗の情報に詳しいはずだったのに、そんな話は初耳だった。
そして同時に、ここ数日圭斗の部屋に明かりが灯らなかった理由を初めて知った。


こんな立派なマンションに、圭斗の新居がある。
その事実に一瞬呆然として、そしてまたしてもさっきまでの緊張がぶり返して来る。


ここに圭斗の部屋があるというのなら……この流れ、どう考えても誘われてる。
ってことは、やっぱり……。


隣に立つ圭斗の横顔を窺い見た。
オートロックを解除してから、集合ポストを覗き込む為に軽く屈めた背中。
中から何通かの封書やDMを手にして、圭斗は涼しい顔をして奥まったエレベーターに向かって行く。


なんでそんな普通の顔してるのよ。
私の方は、もう心臓壊れそうなのに。


一人で余裕の圭斗を見ていると、車の中でシートを倒された時に感じた獣の欲情を感じてしまう。
そして、心の中で地味に焦る。


いやいや……。私だって大人なんだから。
『彼』の部屋を初訪問するからには、潔い覚悟が必要だ。
自分にそう言い聞かせて、大きくフウッと息をつきながら、落ち着こうとした。


「はい、どうぞ」


圭斗がスマートに鍵を開けた部屋に、緊張しながら足を踏み入れる。
思ったより長い廊下を突き抜けて、目の前に広がったリビングに、ただ驚いて目を丸くした。


凄過ぎる。
立地だけでも度肝を抜かれたのに、圭斗の部屋は想像した狭いワンルームではなかった。
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