指先からはじまるSweet Magic
ドキドキしている私なんか全く気にせず、圭斗は目を細めて私の髪にスッと指を差し入れた。
初めて圭斗が切ってくれた髪が、その指からサラサラと零れ落ちる。


毛先を綺麗に遊ばせて、それほど長さは変わってないのに、鏡に映った私はいつもよりちょっと女っぽい雰囲気が増した、なんて思った。


シャンプーからブローまで、全部一貫して圭斗がやってくれたから……私は今、圭斗の魔法で完璧に創り上げられたお姫様だといっても過言ではない。


「里奈」


軽く身を屈めて、圭斗が私を真っ正面から覗き込む。
そのやけに色っぽい瞳に、もう私の方が限界だった。


「で、でもっ……! 私達、恋人同士になったばっかりなのに……こういうの、まだちょっと早いって思うの!!」


圭斗の瞳の誘惑から必死に顔を背けながら、私は必死になってそう言い募った。


「そんなこと、俺だってわかってる」

「わかってないよっ。そ、そりゃ、私達生まれた時から一緒にいるし、お互いのことは並大抵の人間よりもずっと良く知ってるし。
でも、恋人になったのはついさっきで、その数時間後に……っていうのは、ちょっといろんなこと端折り過ぎっていうかっ……!」


ギュッと目を閉じて真っ赤な顔をして、私は完全連射モードのマシンガンのように、息継ぎすら忘れ掛けながらそう言い放った。
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