FDO
だけど、まだ望みはあった。

「橘、まだCasqueを現実側から抜いてもらうっていう手段があるが?」

「勿論、そんなことも想定ないです。だからログインする前に一回顎の下でUSBを繋いだでしょ?あれは、本来外されると強制的にログアウトされるけど、今外されると感電死することになってます。」

まさか、そこまでやられてるなんて。隙が無いって言うほどだった。

それに、そうとなると不安が一気に襲ってきた。今は、現実世界でも12時回っているから弟は寝ているはずだ。だが、朝になれば弟も起きて起こしに来るだろう。その時に抜かれないかが凄く怖かった。でも、橘は少しでも安心させるかの如く、付け加える感じで言った。

「怖がることはない。もう既にニュースやラジオ等でこのことを報道しているはずだ。だが、時間も時間だからおそらく明日まではずっと流れ続けるだろう。」

まだ、安心することは出来た。弟は朝起きたら、まず新聞見ながらテレビでニュースを見るといういかにもおじさんくさい習慣があるのだ。だから、それで弟が気づいてくれればいいのだが。
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