初恋の甘い仕上げ方
そのことを思い出しただけで、再び顔はにやけて口元は緩んでしまう。
彼女として翔平君の隣りにいられるという権利は、思った以上に私を幸せにしてくれ、強くしてくれるようだ。
私が一方的に望んで得たポジションではなく、翔平君も私が隣りにいることに幸せを感じていると教えられて、舞い上がる気持ちは天井知らず。
ますます右肩上がりだ。
いい年して、何だこの甘ったるい感情は、と思わなくもないけれど、ふとその気持ちを口にしたとき、翔平君はあっさりと言ってくれた。
『いい年っていうけど、こうして俺らが並んで生きていくための状況がようやく整ったってことだろ? 萌が仕事で結果を出し始めた今がふたりで寄り添ういい頃合いってことなんだから、その意味を間違えるな。今がふたりにとってのいい年ってこと』
ぎゅうっと、抱きしめてくれた翔平君は、「だけど、油断してたよな。まさか萌の気持ちがここまで俺を射抜いて……ほんと、全然のんびりしたもんじゃないし油断大敵だし、シミどころの頑固さじゃないって」と訳の分からないことをぶつぶつ言ってたけれど。
それを聞くタイミングを失うほどの熱いキスが繰り返されて、私の足には力というものが全くなくなって。
べったりと翔平君にくっついたまま、リビングのソファの上で朝を迎えた。
まだ私を抱くのは早いと言いながらも、一晩中私を抱きしめる腕が離れることはなくて、ドキドキした。
といっても、翔平君の胸に抱え込まれてその鼓動を直接耳にしていると、これまで感じたことのない安心感に包まれるようで、すぐに寝入ってしまった。
一方、翔平君は一晩中私を抱きしめながらまんじりともしない時間を過ごしていたらしい。
私のことを決して短くはない時間をかけて見守り、愛してくれていた翔平君は、自分の腕の中で眠る私を抱きたいと何度も思ったと言っていたけれど。
展開の速さに戸惑う私を気遣い、ぐっと堪えてくれた。
『抱きたい女を抱きしめるだけで何もしないなんて、自分の欲にひたすら忠実だった若い頃には考えられない』
なんてことを言われて、若い頃の翔平君が女性に対してどれだけフットワークの軽い生活をしていたんだろうかと疑問は残るけれど、それはもう時効にしよう。