初恋の甘い仕上げ方




毎週土曜日は休日のはずなんだけどと考えながらも、そう言えばとふと気づく。

「そうだ。新しいラベルの確認だ」

「正解。白石渾身の傑作ラベルの第二弾。それを忘れるなんてどういうことだ?」

「わ、忘れてたわけじゃ……」

「嘘つけ」

「まあ、明日が確認の日だったのは忘れてたけど」

眉を寄せ呆れた顔を見せる小椋君に言い訳をしながら、ごまかすように笑顔を作った。

たしかに明日はラベルのサンプルが出来上がる日で、印刷会社さんに出向いて色のチェックをすることになっていた。

私のイラストが採用されたペットボトルは売れ行き好調で、来春には新しい絵柄の限定ボトルが発売されることになっている。

最初のラベルで描いた女の子を再び登場させることと、春だけの限定商品ということで、季節感のあるイラストというのがメーカーさんからの指定だった。

私が手がけた中で一番大きな仕事だった前回は、ただ夢中でイラストを描き楽しむこともできたけれど、それは私の作品がまさか選ばれることはないだろうという軽い気持ちもあったからだ。

けれど今回は指名をいただいた時点で商品化は決定されていて、デザインのテイストも納期もしっかり伝えられた。

サポートではなく、自分の力で多くを進めていかなくてはならないプレッシャーは半端なものではなかったけれど、一方では大きなやりがいも感じていた。



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