初恋の甘い仕上げ方
とりあえずは抱えている仕事をひとつひとつ進めなければならないし、本当に翔平君と一緒に暮らすのだろうかとそちらも気になっている。
私の家族に了承を得ていたり、お見合いする予定だった男性に頭を下げて断ってくれたとはいっても私がそれを黙ってやり過ごすわけにもいかない。
先方と顔を合わせて謝罪をしなければならないのならば、なるべく早く伺おうと思っている。
今朝、実家に電話をいれたときに母さんから「お見合いはお断りしたから気にすることはないわよ」とくすくす笑いながらの言葉をもらっているとはいえ、気になるし。
そのくすくすと笑っている真意はきっと、翔平君が私の気持ちを受け入れてくれたというほっとしたものだと簡単にわかる。
とにかく、今日は仕事のあと実家に顔を出すと伝えている。
我が家に事務所のみんなに来てもらうのは、それらをすべてクリアして、落ち着いたからだな。
翔平君と一緒に暮らすのだとしたら、もちろんその準備も必要だし。
今でも夢か現実かわからない曖昧な気持ちだけれど、幸せ過ぎて怖くもある。
「白石?」
「え?」
「また、にやけてるぞ」
「あ、ごめんごめん。へへっ。えっと……そうそう、新居には近いうちに来てもらえればと思うけど、お祝いは気にしないで。ソファやらいろいろお祝いでもらったし。必要なものはほとんどあるから」
「ソファ?そんなものまでお祝いでもらったのか?」
「ずっと欲しいなって思っていたものでね、座り心地も抜群なんだ」
私はそう言いながら、夕べ翔平君と並んで座り、その体温をじかに感じたことを思い出した。
ふたり用のソファはお互いの距離がぎゅっと密になって、自然に触れ合うことができる。
今もまだ隣に翔平君がいてくれるような錯覚さえ感じて、再び口元が緩みそうになるのを慌てて引き締める。
同時に熱くなる体に戸惑う反面、嬉しさも感じていると。
「新居へのご招待なら俺も手を挙げていいかな?」
背後から低い声が響いた。