初恋の甘い仕上げ方


「美乃里、滅多に人に頼みごとなんてしないのに、どうしてもあのソファをすぐに調達してくれってあまりにも必死でね。その姿が新鮮で僕も頑張っちゃったよ」

ははっと笑い、手にしていたコーヒーを飲み干した。

別府所長は、普段から仕事の大きさには拘らず、楽しい仕事、喜んでもらえる仕事を優先的に引き受けては奥様に「たまには社員の生活とやりがいを考えてお金になる仕事をしなさい」と言われて怒られている。

年に数回、思い出したように世間から注目されるような大きな仕事を受注してくる。

どうやったらそんな効率よく仕事を探してくるのかと不思議に思っていたけれど、もしかしたら、美乃里さん、というよりも水上美乃里という大女優との縁に負けないほどの太いつながりを幾つも持っているのかもしれない。

翔平君の上司が誰なのかは知らないけれど、別府所長と知り合いだと言っていたし、目の前でこうして見せている以外の姿を隠しているのかも。

自分の胸の内をあっさりと見せる人ではないとわかってはいるけれど、奥が深い人だとぼんやり考えていると、別府所長は膝を折り、私と視線を合わせた。

からかうような笑みを間近に見せられて、私は思わず距離をとるように椅子の背に体を預けた。

「僕、翔平君のことも、彼が小さな頃からよーく知っているんだよね」

思わせぶりな言葉に驚く私を楽しむように、別府所長はさらに言葉を続ける。








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