初恋の甘い仕上げ方
「そうなんだ、まあ、失恋したからってすぐにお見合いに逃げるのもどうかと思うし、それが正解なんじゃないか?」
「うん。お断りして、良かったんだけどね。だって、その……失恋、ってのもちょっと違って」
「え?」
これまで翔平君との関係を嘆く私の側で見守っていてくれた小椋君に、どう言えばいいのやら、悩む。
長すぎる初恋、おまけに片思いなんていう悲劇のヒロインのようなシチュエーションをぐずぐずと語る私を突き放すこともせず、反対に励ますこともせず、ただ見守ってくれた。
いざ翔平君と気持ちを寄り添わせることができたといっても、照れもあるし、これまで私が嘆いては落ち込んでいた時間は一体なんだったんだと呆れられそうだなとも思い、なかなか切り出すことが出来ない。
言わないわけにはいかないんだけどと考えていると、別府所長が楽しそうに口を開いた。
「白石さんは初恋を実らせたという幸せ者なんだよ。二十年近く? ずーっとしつこく翔平君を好きだったなんて驚きだけど、おめでとう」
「あ、あの、ありがとうございます……でも、どうして」
「ん? 昨日水上美乃里の新しいCMの発表会があったんだけどさ、その商品のデザインを僕がしたから、招待されて。で、休憩のときに翔平君から電話があった」
「え、翔平君から? 昨日一緒にいたのに」