初恋の甘い仕上げ方



「へえ、昨日、一緒に?」

からかうような別府所長の目に、私は思わず口をつぐんだ。

何かを知っているような視線がやたら私を刺すようで、もじもじしてしまう。

「昨日からずっと一緒にいたんだ? 朝まで……って聞くのも野暮だな。その印はしっかり見えてるし」

「印?」

「今日はハイネックのセーターがいいって翔平君に言われなかったか? あ、わざと見える服を着せたとか。彼もクールな見た目によらず、自分のものは自分のものってちゃんと主張するってことか」

「見えるって、何が見えるんですか?」

別府所長の言葉が理解できず、問い返した。

すると、何故か小椋君が立ち上がり、机に身を乗り出して私をじっと見る。

その様子があまりにも真剣で、私は思わずあとずさったけれど、その先には別府所長がいて、身の置き所に困ってしまった。

「所長、どういう……」

小さな声で問う私に、別府所長はくすりと笑い「白石さんも、いいオトナだから、気にすることはないんだけどさ」とつぶやいたかと思うと。

私の首筋を人差し指でするりと撫でた。





< 124 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop