初恋の甘い仕上げ方
そのとき、別府所長が再び口を開いた。
「翔平君は、とうとう白石さんに陥落。お見合い相手に直接会いに行って頭を下げてお見合いを断ってきたらしいぞ。それほど若くもないのに、そんな情熱がどこにあったんだろうなあ。美乃里も電話でそれ聞いて言葉を失ってた」
「若くないってのは余計です」
「はは、悪い悪い。でも、羨ましいんだよ、好きな女のために頭下げるなんてよっぽどの想いがなきゃできないし、ある意味プライド捨てなきゃ無理だろ」
「……たしかに」
その言葉に同意しつつも、別府所長はどこまで事情を知っているんだろうかと不思議に思う。
それに、美乃里さんが翔平君からいろいろと報告を受けているのも驚きだ。
翔平君とご両親の関係が悪いわけではないし、お互いを思いやる気持ちがあるのは知っているけれど、まさか昨日のうちに話しているとは思わなかった。
「美乃里、本当に喜んでたぞ。年も離れているし、翔平君は恋愛にクールだから、白石は翔平君を諦めてほかの男のものになるんだろうって覚悟していたみたいだ」
「覚悟なんて、おおげさです」
「白石と翔平君がまとまったことがそれだけ嬉しいってことだな。とにかく良かった。……ということだ、小椋」
別府所長は声音を変え、視線を小椋君に向けた。