初恋の甘い仕上げ方
それにつられて私も小椋くんを見れば、机に両手を突き、じっと私を見つめている瞳。
強い力と暗い感情を乗せている瞳に射られているように感じて、ふっと息をつめた。
「白石は翔平君が大好きで、ほかの誰も目に入らない女だ。わかっていただろうけど、それがこの先変わることもない。翔平君の気持ちも白石のものだとなれば、ふたりの関係は鉄壁。この意味、わかるな?」
「……わかりたいとは思わないですけど、まあ」
別府所長の言葉に一拍置き、渋々頷いた小椋くんは、すっと体の力を抜きずるずると椅子に座った。
背もたれに体を預け、一度大きく息を吐き出すと。
「所長、何もかもお見通しだっていうその口ぶり、ちょっとむかつくんですけど。だけど、そっか。あの翔平君が陥落か。おまけに、あの水上翔平だったら、俺が敵うわけないだろ」
視線をさまよわせながら、そう言った。
別府部長は何をお見通しなんだろう、おまけに翔平君が陥落って。
私は別府所長と小椋君のやり取りが理解できず、交互にふたりを見る。
肩をすくめて口角を上げた別府所長の明るさに対して、眉間を寄せている小椋君の沈んだ様子に戸惑わずにはいられない。
仕事をしている同僚たちも、チラチラと様子をうかがっている。
私に事情を問いかけるような視線を向けられても、私にもさっぱりだ。
すると、その場の空気を変えるように、別府所長が大きな声をあげた。
「さすが俺の秘蔵っ子だと評判の小椋だ。世の中にはどうにもならないことがありすぎるってすんなり受け入れられるところ、俺に似て男前な奴だ。かわいいぞ。よし、そのご褒美だ、おっきな仕事をお前に任せよう」
「……え? 仕事?」
戸惑う小椋君の声につられて私も別府所長を見ると。
「来年開催される博覧会に並ぶ、自販機のデザインだ」