初恋の甘い仕上げ方




翔平君の弱い部分や格好悪い部分を知った私が幻滅しないか、そして離れていかないか不安だったのかと、多少の優越感を覚えた。

今まで翔平君の背中を追いかけてばかりだったせいか、こうして真正面から見ることも、そっと見え隠れする感情を受け止める機会はなかった。

好きだという気持ちにだけ素直になって過ごし、そして近くに置いてほしいという想いばかりが私を動かしていたけれど、翔平君も私を好きだとわかった途端、そこからさらに深い部分が見えてきた。

「私が採用試験を受けに行くのを引き止めて、その後はどうするつもりだったの?」

自分でもびっくりするほど、落ち着いた声で、聞いてみる。

これまでなら、そんな質問をすることなんてできなかったはずだ。

自分を拒まれることなら簡単に想像できたけれど、受け入れてくれるなんて思えなかったせいか、少しでも拒まれる言葉を聞かされる可能性のある質問はできなかった。

だけど、私は単純だ。

翔平君が私を求めてくれているとわかった途端、私を喜ばせる言葉を言ってもらえることを期待してそんなことを聞いてしまう。

翔平君の沈んだ表情とは反対に、私のそれが明るいものに見えたのか、翔平君の口から微かに笑い声が漏れた。

呆れているような、それともほっとしているような。

「そうだな、あの日もしも間に合って萌を捕まえることができたら。樹が近くにいようが周りにたくさんの人がいようが、こうしていたかもな」

「え? っなに、ちょっと、翔平くんっ、んっ」

それまで静かに私の頬や首筋を撫でていた翔平君の手が私の後頭部に回されたかと思うと、あっという間に引き寄せられた。

驚く私にいたずらめいた笑みを一瞬浮かべて、そして。

「勝手に俺から離れるなって叱って、お仕置きしてたな、きっと」

下心が隠されていそうな艶のある声とともに、翔平君の唇が私のそれに重なった。

「ん……っ。や、やだ、しょう……」

「お仕置きだから、拒否権なし」

唇に感じる翔平君の熱を受け止めながら、反射的にもがいてみても、何の効果もなく。

翔平君の胸に両手を突っ張ってみても、まるで鋼の壁に抵抗しているようでびくともしない。





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