初恋の甘い仕上げ方
「ああ。ちゃんとわかってるし、何度も後悔した。だから、もう迷わないし待たないから、萌もおもいっきり飛び込んでこい」
「ほんと?」
閉じていた目をそっと開け、視線を向けると、射るような強い瞳とぶつかった。
翔平君は、私の体を気遣いながら顔を寄せたあと、そのままソファに体を押し倒した。
そして、私の顔の両側に手を突き額を合わせた。
「萌が就職のために俺から離れていこうとしたときに、ちゃんと自分の気持ちはわかっていたんだ。こんなに愛しい女を手離すことなんてできないって、気づいていたのにそれを無視した結果があの事故だ」
「愛しい……?」
翔平君の口からこぼれる言葉ひとつひとつが優しくて嬉しくて、何度も頭の中で繰り返す。
「おまけに今回のお見合いだ。萌が就職したいって望んでいた企業との縁を断ち切ったのは俺だから、せめて萌が今の仕事にやりがいを感じて、結果を出すまでは見守るだけにしようと思っていたのに。何が見合いだ。何がエリートだ。ふざけんじゃねえ」
翔平君は、自分の言葉に気持ちを昂ぶらせたのか、荒々しく、そして苦しげな呻き声を吐き出すと、気持ちを落ち着けるように何度か私にキスをした。
その合間にも「あの男、見た目もいいし、絶対女には不自由してないはずなのに、なんで見合いなんだ」とか「次男だから萌の両親の面倒だってみるとか、条件も良すぎなんだよ」とか。
ぶつぶつ言いながら、胸の中にくすぶっている悔しさのようなものを吐き出している。