初恋の甘い仕上げ方
「萌……。おまえ、いつのまにそんなに口がたつようになったんだよ。もう、ほんと、年甲斐もなくめちゃくちゃにしたいんだけど」
「め、めちゃくちゃ……」
「このまま萌の中に俺の全部をぶち込んで、十か月後には家族をひとり増やしてもいいんだぞ」
首筋に顔を埋めたままささやかれる言葉はくぐもっていて、おまけに表情が見えない。
どこまで本気なのかわからないけれど、もしもそれが実現するのなら、かなり嬉しい。
私だってもう二十七歳なんだから、それは現実的な話でもあるし、第一、愛する人の子どもを産める幸せ、味わってみたい。
男の子だったら家に翔平君がふたりいて楽しみが二倍だし、女の子だったら翔平君の素敵なところを母と娘で見つける競争をしたり。
うん、これは、たとえ娘相手でも絶対に負けない自信がある。
そうか、家族が増えるって、本当に楽しいことなのかもしれない。
十か月後でも遅いくらいだ。
「翔平君の分身、産みたいなあ」
胸に抱きかかえている翔平君の頭を撫でながら、思わずつぶやいた私に、翔平君はぴくりと体を震わせた。
「産みたいって……お前、ほんとに。いつから……。他の男にはそんなこと言うなよ」
「え?言うわけないし。だって、産みたいのは翔平君の子どもだもん。何を心配してるの?」
「……小悪魔な処女だな」
「しょ、しょ……」
翔平君の口から洩れた言葉に、私は大きく反応して口ごもった。
翔平君の頭を抱きしめる手に力が入り、翔平君は何度かむせた。
そうだった。
私、子どもを産むどころか、そのための経験はまるでない。
キスから先の何から何まで想像の域を出ないというのに、子どもを産みたいだなんて、かなり思い切った発言だったかもしれないと気づいた。
「まあ、今日は家族づくりは我慢しよう。こうして萌の胸に赤い花を咲かせるだけで我慢しておく。だけど、すぐにここで一緒に暮らすから、そのときは覚悟してろよ。俺に腹をくくれって言うんだから、萌も腹をくくって俺に抱かれろ」
体を起こし、私の額にかかった髪を梳きながら、翔平君がにやりと笑った。
その声は一気に艶を帯び、私の焦りを見透かしているのがよくわかる。