初恋の甘い仕上げ方
「俺だけの、ってしるし。キスマークなんて、今までつけようって思ったことなかったのにな」
今までって言葉が気になりつつも、翔平君に胸の先端に痛みを落とされ、その周囲にキスマークをつけられていると、そんなのどうでもよくなってくる。
既に翔平君は三十五歳、今までの恋人とそんな機会もそれ以上のこともたくさんあっただろうし。
気にしても、仕方がない。
今は私の胸元に、夢中で花を咲かせる様子が愛しくてたまらない。
「翔平君……」
思わず、掠れた声も出てしまう。
「これ以上、おねだりしても今日はだめだからな。我慢しろよ小悪魔め」
「が、我慢……しなくて、いいよ」
体全体に染みわたる刺激に促されて、普段の私には絶対に言えない言葉だって出てくる。
胸だけでなく、甘美な刺激とそれ以上を求める欲求が体全体に満ちている。
翔平君に抱かれたいと、私のすべてで伝えていると言うのに。
「あのなあ、俺だって我慢してるから、これ以上煽るな」
「どうして、我慢……」
翔平君も私も、これ以上の深いことをしたいと、抱き合いたいと求めているのなら我慢する必要はないと思うのに。
それに私を見つめる翔平君の瞳からは、これまで見たことのない欲求がたしかに見えるのに、何故、我慢?
すると、そのとき。
来客を告げるベルが、部屋に響き渡った。
「我慢の理由はこれだよ。萌は忘れてるみたいだけど、両家の親がいそいそやって来たみたいだな。……まったく、芸能人のスケジュールに合わせるとこれだから困る。夜中に人の家にお邪魔するなんて、遠慮しろよな」
私の唇に軽くキスを落とし、翔平君は身体を起こした。
「萌も早く服を整えておけよ。俺が狼になって萌をいただいたって誤解されるぞ」
くすくす笑いながら、翔平君はソファを降りてリビングの壁のモニターを覗いた。
「おーお。四人おそろいで嬉しそうにしてるぞ」