初恋の甘い仕上げ方
第六章
第六章
私の両親と、翔平君のご両親がそろって顔を見せたときの様子は一生忘れられないと思う。
あらかじめ我が家を訪ねてくることはわかっていたけれど、奇襲という言葉がぴったりだった。
俳優という仕事柄、もともと声にはハリがあるし立ち姿は惚れ惚れするほど綺麗で、何を言ってもどんな仕草を見せても視線を集める魅力を持っているけれど。
昨夜の美乃里さんたちはこれまでになく勢いづいていた。
私の家のリビングにばたばたと入ってきたかと思えば。
『もう、翔平の動きが遅いから、突然現れた男性に萌ちゃんをかっさらわれるところだったじゃない』
『惚れた女を手に入れられないなんて、男としてどうかと思うぞ。萌ちゃんだって翔平を想って待ってたんじゃないのか? 女を待たせるなんて、俺には理解できん』
翔平君のご両親が呆れた口調で翔平君を責めた。
幾つもの荷物を部屋に運び込んだのはいいけれど、それを床に置いた途端翔平君に詰め寄り、厳しい言葉を投げかけていた。
どうして私ともっと早く結婚しなかったのか、という意味あいの言葉ばかりで、翔平君はそれらを聞きながら、面倒くさそうに頷いていた。
何故か私を気に入ってくれている翔平君のご両親は、昔から何度も口癖のように「我が家にお嫁に来て私たちの娘になってね」と言っていた。
私が翔平君を好きだということは誰の目にも明らかだったようで、私が照れて「そんなこと無理です」と俯くたび、翔平君の説得なら任せてと言って力づけてくれたけれど。
説得しなければ私の気持ちが報われないのなら、幸せになれるわけもない。
私は私の想いと行動で、翔平君の気持ちを手に入れたいと考えていた。
けれど、そんな思いは翔平君に綺麗な恋人が現れるたびに砕かれていき、世間をよく知らない若い頃ならまだしも、年を重ねていくにつれて弱気な心が芽生えていた。
それでも翔平君への恋心を捨て去ることも諦めることもできなくて、ひたすら、必死で想いをつないできた。
翔平君と気持ちを重ね合わせた今だから冷静に振り返ることができるけれど、私って、本当に頑張ったなと、思う。
私の両親と、翔平君のご両親がそろって顔を見せたときの様子は一生忘れられないと思う。
あらかじめ我が家を訪ねてくることはわかっていたけれど、奇襲という言葉がぴったりだった。
俳優という仕事柄、もともと声にはハリがあるし立ち姿は惚れ惚れするほど綺麗で、何を言ってもどんな仕草を見せても視線を集める魅力を持っているけれど。
昨夜の美乃里さんたちはこれまでになく勢いづいていた。
私の家のリビングにばたばたと入ってきたかと思えば。
『もう、翔平の動きが遅いから、突然現れた男性に萌ちゃんをかっさらわれるところだったじゃない』
『惚れた女を手に入れられないなんて、男としてどうかと思うぞ。萌ちゃんだって翔平を想って待ってたんじゃないのか? 女を待たせるなんて、俺には理解できん』
翔平君のご両親が呆れた口調で翔平君を責めた。
幾つもの荷物を部屋に運び込んだのはいいけれど、それを床に置いた途端翔平君に詰め寄り、厳しい言葉を投げかけていた。
どうして私ともっと早く結婚しなかったのか、という意味あいの言葉ばかりで、翔平君はそれらを聞きながら、面倒くさそうに頷いていた。
何故か私を気に入ってくれている翔平君のご両親は、昔から何度も口癖のように「我が家にお嫁に来て私たちの娘になってね」と言っていた。
私が翔平君を好きだということは誰の目にも明らかだったようで、私が照れて「そんなこと無理です」と俯くたび、翔平君の説得なら任せてと言って力づけてくれたけれど。
説得しなければ私の気持ちが報われないのなら、幸せになれるわけもない。
私は私の想いと行動で、翔平君の気持ちを手に入れたいと考えていた。
けれど、そんな思いは翔平君に綺麗な恋人が現れるたびに砕かれていき、世間をよく知らない若い頃ならまだしも、年を重ねていくにつれて弱気な心が芽生えていた。
それでも翔平君への恋心を捨て去ることも諦めることもできなくて、ひたすら、必死で想いをつないできた。
翔平君と気持ちを重ね合わせた今だから冷静に振り返ることができるけれど、私って、本当に頑張ったなと、思う。