初恋の甘い仕上げ方




突然翔平君の口から出た言葉に驚きつつ、再び顔が熱くなる。

翔平君との距離が縮まって、隣にいられる未来を考えられるようになったとはいえ、結婚という具体的な言葉にはどう応えていいのかわからない。

もちろん翔平君との未来に結婚という通過点を必ず手に入れたいとは思っている。

とはいってもここ数日の間に一気に動いた関係に右往左往している自分がいるのも確かで。

結婚というものに現実味を感じられずにいる。

けれど、こうして間近に翔平君がいると、今すぐお嫁さんにしてほしいなと願う自分もいるし、今の私は翔平君とのことばかりを考え過ぎていっぱいいっぱいだ。

「結婚式のスピーチはきっと別府さんだろうな……あの人萌のことを相当気に入ってるし、仕事もやめさせないだろうし」

「翔平君?」

熱くなった頬と、結婚という言葉にあたふたしている私をぼんやりと見ながら、翔平君がぽつりとつぶやいた。

今、別府さんと聞こえたけれど、そこまで二人は仲がいいのだろうか。

「なんでもない。萌のことをお嫁さんにするための段取りをしてただけだ。あ、俺は、車はここに置いて向かいのファミレスにいるから、終わったら来いよ」

「あ、うん。わかったけど」

相変わらず「私のをお嫁さんにする段取り」という、意味不明且つじわじわと嬉しさが満ちてきそうな言葉に反応した。

翔平君が、私との結婚を具体的に考えてくれているんだと感じてうきうきするあたり、私もやっぱり夢見る女の子だ。

恋する気持ちに素直になって、このまま翔平君と一緒にドライブにでも行きたくなるけれど、そうもいかない。

私は気持ちを切り替えるように翔平君に笑って見せた。

「じゃ、行ってくる。連れて来てくれてありがとう。助かった」

後部座席に置いていた鞄に手を伸ばし取ろうとすると、一瞬早く翔平君の手がそれを掴み私に渡してくれた。

「あ、ありがとう」

「長く使ってるんだな。それ、就職祝いに俺が買ってやった鞄だろ?」

「うん。資料はたくさん入るしノートパソコンもちゃんとおさまるし、使いやすい」

使いやすさ重視のシンプルなカバンだけど、翔平君が普段使っているものと同じブランドのものだと聞いて、大喜びしたのを覚えている。

五年近く使ったせいか持ち手も多少傷み、クリアな茶色も日焼けで変色している部分がある。




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