初恋の甘い仕上げ方
そして、翔平君はさっき私がお皿に落としてしまったブロッコリーをフォークで刺し、私の口元に近づけた。
「え、翔平君、あの……自分で食べるし」
「いいから」
翔平君は慌てる私の言葉を無視し、ブロッコリーで私の唇に軽く触れた。
仕方なく、私は口を開き、パクリと食べる。
それを見ている周囲の目が気になって仕方がないけれど、翔平君はどこ吹く風だ。
「呼び捨てなんて、大好きなブロッコリーを落とすほど大したことじゃない。呼びかたはどうでもいいんだ。萌の名前を呼ぶときにしか気持ちをこめてないから」
さっき、翔平君が三崎さんを「紗和」と呼んだだけで私が動揺したこと、気づいてたんだ。
「紗和と呼び捨てにするのは俺だけじゃない。大学時代からの仲間はみんなそうだ。
彼女の好みや体質を知っているのも同じ。俺でなくても斉藤さんには同じことを伝えてるはずだ」
「学生時代から?」
「そうだ。学部は違うけど、サークルで知り合って、それからの長いつきあいだ。彼女がモデルのオーディションに落ち続けていたのも間近で見てきたし。あいつ、落ちるたびに仲間みんなに召集かけては豪快に飲んでたな」