初恋の甘い仕上げ方
当時を思い出したのか、翔平君はくすりと笑い、肩を揺らした。
「あの大学に入ったのもオーディションのとき審査員の注目をひくためだったんだ。見た目だけでなく、高学歴という個性もオーディションでは有利に働くって思ったらしいぞ」
高学歴と簡単に言うけれど、翔平君や三崎紗和さんが卒業した大学は国内で一番難しいと言われている大学だ。
小椋君も卒業しているその大学は、医者や弁護士はもちろん、官僚や政治家を多く輩出し、あらゆる分野の世界的権威と呼ばれる人がたくさん卒業している。
自分がモデルとして成功するための個性のひとつとして入学したなんて、信じられない。
相当勉強しないと実現しないし、そのために犠牲にした時間はかなりのものだろう。
翔平君だって、高校三年の一年間は我が家で夕食を食べたあと勉強している姿をよく見たし。
「紗和はそうやって努力して今のポジションを手にしたんだ。今回初めて映画で主演を務めるけど、それは彼女の努力によるもので運だけじゃない。最近はなかなか会う機会も減ったけど、彼女だけでなく当時の仲間たちとは今でも付き合ってるんだ。だから、紗和のバックアップ、よろしくお願いします」
翔平君は、視線を斉藤さんに向けて、軽く頭を下げた。