初恋の甘い仕上げ方
おまけに、何度か唇を引き締め、話すタイミングを図っている表情もまた素敵で。
何をしても何を言われても、私は翔平君が大好きなんだと、改めて実感していると。
翔平君は私の頬から手を離して、ソファの足元に置いてあった鞄の中から何かを取り出した。
「……これ、覚えてるよな?」
「え、これって」
私は、翔平君の手にあるものを見て、慌てて手を伸ばした。
「うそっ。これ、今頃どうして翔平君が持ってるの?」
思わず両手で抱えるように持ち、じっと見ながら翔平君に大声で尋ねた。
今私の手にあるもの、それは翔平君が大好きだったオレンジジュースだ。
熱を出した翔平君のために自動販売機まで買いに行ったのに、当時の私の身長ではひとりで買うことができなかったオレンジジュース。
あの日、美乃里さんに抱っこしてもらってようやく手に入れた懐かしい物だけど、どうして翔平君が持っているんだろう。
「よく見てみろ。ちょっと違うだろ? というより、昔は缶ジュースだったけど、ペットボトルになってるんだ」
「あ、そういえば」
言われたとおり、当時翔平君がよく飲んでいたのは缶ジュースで、今私が手にしているのはペットボトルだ。
それも、飲みきるのにちょうどいい三百五十ミリリットルの小さなもの。
「ラベルのデザインが当時の缶のデザインと同じなんだね、きっと」
「ああ。あの頃のデザインを基本的にはそのままラベルに使ってるんだ。少し手が加わってるけどな」
翔平君の言葉に私は頷き、再びオレンジジュースに視線を戻した。
たとえペットボトルに形を変えていても、目にした瞬間、翔平君が大好きだったオレンジジュースだと気づいたのは、ラベルに描かれているデザインが当時のままだったからだ。
黄色とオレンジ色が映える太陽の絵は、当時活躍していたイラストレーターさんにお願いして描いてもらったと聞いたことがある。
どこかいびつな形の太陽には人のよさそうな笑顔が描かれていて、何故か太陽から伸びた手がうちわを持っているという楽しい絵だ。