初恋の甘い仕上げ方





私が翔平君を好きだということは察していただろうし、報われない想いに何度か見せた涙が周囲のため息を誘っていたのも知っている。


『どうせなら、おいしいランチが食べられるお店でセッティングしてね』

明るくつぶやいた私に、ほっと息をついた両親の気持ち。

よっぽど私を心配していたと気づいて、後戻りできなくなった。

翔平君との未来が閉ざされてしまったのなら、お見合いでもなんでもしようと投げやりになったことは否定できない。

お見合いも出会いのきっかけのひとつだから、相手の男性が私を愛してくれて一生を添い遂げられる運命の人かもしれないと、強気で考えてみたり。

翔平君が結婚して幸せになる姿を見て傷つくことはわかっていたから、その前に私を救い上げてくれる誰かに出会いたいと、逃げの気持ちがあったのも否定はできない。

ようやくお見合いをする気になった私の本心に両親は気づいていたのか、私の気持ちが変わらないうちにといそいそとお見合い話を進めた。

そして次の日曜日に、両親が用意してくれたワンピースを着て、私がリクエストしたアマザンホテルでのランチを食べながらのお見合いがセッティングされた。

もちろん、翔平君への想いに区切りをつけるために、あえて選んだアマザンホテルだ。

『お相手は萌と同い年のサラリーマンの方』

釣書を見れば、先方の勤務先は誰もが知っていると言っても過言ではない大企業で、彼は営業をしているらしい。

『出世は確実って言われていて、社内の女性からの人気も高いそうよ』

母さんが通っている書道教室の先生の知り合いらしい彼は、写真で見る限りお見合いとは縁遠い人のようだ。




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