麗雪神話~幻の水辺の告白~
「それは、俺が君のことを、愛しているからだ」



(――――――――!!)

セレイアの瞳は、これ以上ないというほど見開かれた。

彼の言ったことはとても信じがたいことであった。

彼は神。人間ではないのだ。

そんな彼が、自分を、愛している―――?

「う、うそよ…」

やっと出た台詞がそれだった。

―そう、嘘か冗談に決まっていた。

彼は神なのだ。自分とは、生きる次元の違う存在なのだ。

それなのに、ディセルは決してセレイアから目をそらさず、熱のこもった声で語る。

「嘘じゃない。
ずっと、ずっと前から…トリステアにいる頃から、君のことが好きだった。
好きだから抱きしめた。
好きだから口づけした。
もう俺の気持ちから…逃げないで」

セレイアだってもうわかっていた。

逃げないでと彼は言うが、ここに至っては逃げようがない。

その目を見れば、声を聞けば、……そして共に旅をする間常にいたわり深く接してくれた彼を思い出せば、逃げることなどできるはずもない。

彼は本気だ。紛れもなく、本気なのだ。

セレイアの胸中には、嵐が吹き荒れていた。

困惑の雨、罪の意識の風、そしてその中に…確かな喜びの感情が溶け込んでいる。

けれどその喜びが、罪の意識の風を暴風へと変化させてしまう。
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