麗雪神話~幻の水辺の告白~
第六章 神の知らない神

エイフォーティク帝国と、東の国マラスとの国境近く。

そこは今や、戦火の真っ只中だった。

広大な平野に、両国軍が布陣し、睨み合う。

そのエイフォーティク側の最前線にて、士気を鼓舞する目的の式典が行われていた。

その様子はマラス側にも見えている。

むろん、見えるようにやっているのである。

味方の士気を上げるとともに、敵方の士気を下げる。戦の常套手段だった。

“我ら 帝国 一番兵
 美し 陛下の一番兵
 一番兵は負け知らず
 必ずや 新し領土 捧げます“

男たちの野太い歌声が渇いた大地を震撼させる。

男たちの前に立っていた皇帝レコンダムが片手を挙げると――

陣営に焚かれていたすべてのたいまつの炎がぶわりと勢いを増した。

そしてそれは空高くうねうねと形を変えて延び、兵やレコンダムの頭上を、アーチのように取り囲む。

ウォォォッと歓声が上がった。

(くだらねえ)

内心毒づいたのは、たった今炎を操って見せた張本人、サラマスだ。
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