麗雪神話~幻の水辺の告白~
なんのための戦なのか、いまいちはっきりしないこの戦。

兵力差は歴然。エイフォーティク十万、マラス二万。完全に、レコンダムの道楽だと言える。

こんな式典などせずとも、勝てるだろうに。

だが、ここ数週間レコンダムと共に過ごしてみて、わかったことがある。

彼は人々が怯える様を見るのが好きなのだ。

だからこの式典も、マラス側を怯えさせるためにやっていることだと理解していた。

サラマスは炎の神として、レコンダムのすぐそばに、控えることが許されている。

腹心プラトーと同じ位置だ。

破格の待遇といえるだろう。

式典が無事終わると、レコンダムが労いの言葉をかけてくれた。

「よくやった、炎の神サラマス。今後もよろしく頼む」

「へいへい」

こんなことで褒められても、嬉しくもなんともない。その態度が、プラトーの気に障ったのだろう。

「ふん、陛下に気に入られたからって、いい気になるなよ小僧」

プラトーはそんな冷たい捨て台詞を吐き捨てて、さがっていった。

配下になることを条件に地下牢から出されてから、サラマスはこうした式典で炎の力を使ったり、皇帝の護衛をしたりするのが仕事だった。
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